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また、この間平成6年3月28日には、厚生大臣の懇談会である「高齢社会福祉ビジョン懇談会」において「21世紀福祉ビジョン−少子・高齢社会に向けて−」と題する報告書が提出され、翌日閣議報告された。この報告では、介護や子育てなど福祉重視型の社会保障制度への再構築の必要性を明示し、介護施策の充実については、ゴールドプラン策定当初との事情変更に応じて、ゴールドプランの見直しにより、目標水準の引上げを行うとともに、質的にも充実して、介護基盤の緊急整備を図っていく必要があることなどの提言が行われた。
こうしたことや、地方自治体が老人保健福祉計画に基づいて行う地域の保健福祉サービスの基盤整備を支援していく必要性を踏まえ、ゴールドプランを全面的に見直し、高齢者介護施策のさらなる充実を図ることとし、大蔵・厚生・自治の3大臣合意により平成6年12月「新ゴールドプラン」が策定され、7年度より実施されることとなった。
見直しに当たっては、高齢者介護対策の緊急性を考慮し、
?@当面緊急に行うべき各種高齢者介護サービス基盤の整備目標の引上げなどを行うとともに、
?A今後取り組むべき高齢者介護サービス基盤の整備に関する施策の基本的枠組みを新たに設定し、平成11年度までの間において、財源の確保に配慮しつつ、具体的施策の実施を図ることとされた。
そして、平成7年度以降11年度までの総事業量は、ゴールドプランに係る部分を含め、9兆円を上回る規模のものとすることとされた。新ゴールドプランにおいては、ゴールドプランに比し、サービス整備目標の引上げが図られたことはもちろん、今後取り組むべき施策の基本的枠組みを定めた総合的なプランとして策定されたことにも大きな意義がある。すなわち、新ゴールドプランにおいては、すべての高齢者が心身の障害を持つ場合でも尊厳を保ち、自立して高齢期を過ごすことのできる社会を実現していくため、高齢期最大の不安である介護問題について、介護を必要とする者だれもが、自立に必要なサービスを身近に手に入れることのできる体制を構築することを目標として、?@利用者本位・自立支援、?A普遍主義、?B総合的サービスの向上、?C地域主義の基本理念を掲げている。
「利用者本位・自立支援」とは、高齢者がその心身の機能を最大限に活用し、できるかぎり自立した生活を営むことを支援するために保健福祉サービスは提供されるべきであり、このためにはサービスを、高齢者個々人の意思と選択を、できるかぎり反映させた利用者本位のものとして提供していくべきことを示している。「普遍主義」とは、従来、高齢者福祉サービスは、ともすれば低所得やひとりぐらしの高齢者など特別な援助を必要とする者の制度ととらえられがちであったが、介護リスクが普遍的なものであることから、所得の多寡や家族形態などにかかわらず、支援が必要な高齢者に対して必要なサービスをあまねく提供しようとすることを意味する。「総合的サービスの提供」とは、在宅ケアを基本に、医療・保健・福祉にまたがる利用者のニーズにこたえるため、サービスを総合的に提供していくことである。「地域主義」とは、先に述べたとおり、市町村を基本に、住民に最も身近な地域において必要なサービスをきめ細かく提供できる体制づくりを行うことである。
以上の基本理念の下、新ゴールドプランにおいては、施策目標として、24時間対応ヘルパーの普及、地域リハビリテーション事業の実施などの「新寝たきり老人ゼロ作戦」の展開、グループホームの実施などの痴呆性老人対策の総合的実施、高齢者の社会参加・生きがい対策の推進など、介護基盤の整備を図ることとしている。

 

 

 

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